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日本の軍隊 (同時代ライブラリー 87) 新書 – 1991/11/15
飯塚 浩二
(著)
日本の軍隊は,敗戦とともに消え去ったのか? 軍隊経験者の討論や様々な文献の検討を通して,人間性を抹殺し,人間を濫用した軍隊の日本社会における役割を明らかにした本書は憲法理解のためにも必読の名著である.
- 本の長さ365ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1991/11/15
- ISBN-104002600874
- ISBN-13978-4002600871
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
敗戦とともに、日本の軍隊と帝国臣民の行動様式は消え去ったのだろうか。軍隊経験者の討論や様々な文献から、人間性を抹殺し、人間を濫用する機構としての軍隊の日本社会における役割を明らかにした比較文化論的研究書。
登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1991/11/15)
- 発売日 : 1991/11/15
- 言語 : 日本語
- 新書 : 365ページ
- ISBN-10 : 4002600874
- ISBN-13 : 978-4002600871
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,058,695位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年8月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書の内容は、大きく二つの部分に分かれている。第一部は将校出身の学生たちとの雑談に近い討論で、かなり退屈です。具体的な軍隊生活を開陳しているのだが、新鮮な話もないので、これは、トンでも本か?と疑いました。だが、第二部に入ると、がぜん、著者の本領が発揮されます。軍隊での具体的事例を基に、一般化を試み始め、さらに、その裏側に潜んでいる本質に迫ろうとします。社会学的なアプローチで、軍事学のようなそれでないので、ちょっと残念ですが、新たなエピソードも面白くて、非常に参考になりました。
2013年3月31日に日本でレビュー済み
日本の旧軍隊の精神的風土を根絶することを希望していたでろう著者の意図には反するが、この精神的風土を受け継ぐのは誰か、という疑問が評者の念頭を離れなかった。受け継ぐというのは、このような精神的風土を利用して社会や政治を操縦する運動が現れ、多くの人々がそれを受忍する、というということである。
著者による旧軍隊の精神的風土に対する批判は、次の2点に要約できると思う。
1. 日本の軍隊は、上級者から下級者に対する私的制裁と恩情により統制されていた。私的制裁と恩情は、上級者にとっては、兵隊を強くするのに欠くべからざる手段であるとともに、自己の出世と利得を図るための道具でもあった。下級者は、私的制裁を受忍し、恩情を有り難く思うことが一般的だった。
2. このような私的制裁と恩情は、天皇の権威又は「お国のため」に正当化され、人間の自然な感情と、事実と論理に基づく議論を抑圧した。これは、19世紀の野戦に勝つためには効果的であったかも知れないが、1940年代の総力戦では戦略・戦術を誤らせ、又兵士を消耗させることで、日本の敗因となった。
評者は、この2点の批判に賛成した上で、21世紀の日本人は、このような私的制裁と恩情と関わり続けることになるであろう、と予想する。日本にはその素地と動機がある。
小泉政権が米国のイラク攻撃を支持して以降、多くの日本人が私的制裁と恩情を容認し始めた。その後、様々な社会的な論議で私的制裁と恩情が問題となったが、大多数の日本人はそれに抵抗していない。ここに私的制裁と恩情が復活する素地がある。私的制裁と恩情が社会の統制に有効だと分かれば、社会や政治で影響力を発揮したい人々は、ますますそれに頼るようになるであろう。ここに私的制裁と恩情が復活する動機がある。
日本全体の規模でそのような私的制裁と恩情が広がるとすれば、そのきっかけは、天皇の権威や「お国のため」に代わる正当化の論理の発明であろう。著者は、旧軍隊の私的制裁と恩情の論理が、国家と「親子関係のアナロジー」を持ち込み「近代的な民主主義に対立して一分の隙もみせぬ、水ももらさぬ布石である」と指摘するが、正当化の論理は必ずしもそのような精緻なものである必要はない。ここでも、小泉政権のワン・フレーズ・ポリティクスが恰好の手本を提供してくれる。恐らく、経済的、民族的な利害に関わる正当化の論理が、人々を煽って、私的制裁と恩情の体制を実現してゆくことになるだろう。
本書は、そのような社会を作りたい人、そのような社会に備えたい人に参考となる事例を提供してくれる。
著者による旧軍隊の精神的風土に対する批判は、次の2点に要約できると思う。
1. 日本の軍隊は、上級者から下級者に対する私的制裁と恩情により統制されていた。私的制裁と恩情は、上級者にとっては、兵隊を強くするのに欠くべからざる手段であるとともに、自己の出世と利得を図るための道具でもあった。下級者は、私的制裁を受忍し、恩情を有り難く思うことが一般的だった。
2. このような私的制裁と恩情は、天皇の権威又は「お国のため」に正当化され、人間の自然な感情と、事実と論理に基づく議論を抑圧した。これは、19世紀の野戦に勝つためには効果的であったかも知れないが、1940年代の総力戦では戦略・戦術を誤らせ、又兵士を消耗させることで、日本の敗因となった。
評者は、この2点の批判に賛成した上で、21世紀の日本人は、このような私的制裁と恩情と関わり続けることになるであろう、と予想する。日本にはその素地と動機がある。
小泉政権が米国のイラク攻撃を支持して以降、多くの日本人が私的制裁と恩情を容認し始めた。その後、様々な社会的な論議で私的制裁と恩情が問題となったが、大多数の日本人はそれに抵抗していない。ここに私的制裁と恩情が復活する素地がある。私的制裁と恩情が社会の統制に有効だと分かれば、社会や政治で影響力を発揮したい人々は、ますますそれに頼るようになるであろう。ここに私的制裁と恩情が復活する動機がある。
日本全体の規模でそのような私的制裁と恩情が広がるとすれば、そのきっかけは、天皇の権威や「お国のため」に代わる正当化の論理の発明であろう。著者は、旧軍隊の私的制裁と恩情の論理が、国家と「親子関係のアナロジー」を持ち込み「近代的な民主主義に対立して一分の隙もみせぬ、水ももらさぬ布石である」と指摘するが、正当化の論理は必ずしもそのような精緻なものである必要はない。ここでも、小泉政権のワン・フレーズ・ポリティクスが恰好の手本を提供してくれる。恐らく、経済的、民族的な利害に関わる正当化の論理が、人々を煽って、私的制裁と恩情の体制を実現してゆくことになるだろう。
本書は、そのような社会を作りたい人、そのような社会に備えたい人に参考となる事例を提供してくれる。