著者の Software Design での短期集中連載が個人的に高評価だったので、書籍化で読み返したり人に薦めたりしやすくなり、ありがたいです。
「良い技術書」の私の定義の一つは「ある分野の教科書としても参考書としても使えること」なのですが、この本は、クラウドを使ったWebシステムの負荷試験の計画および実施に関して、
* 教科書として一読し、体系立って学習する
* 業務で実施する際にチェックリストとして使い、抜け漏れやムダを防ぐ
の両方で使える、この定義通りの良い技術書でした。
クラウド上ではスケールアップやスケールアウトが柔軟にできるのですが、そのせいで逆にボトルネックの特定が困難になります。
いざ負荷テストをしても、「なんかこの辺の値が限界っぽいですがどうしたら上がるかはわかりません」となることが多いです。
何度も経験があります。
この本では、そういう雑な負荷テストではなく、インフラの構成要素を一つずつ足していきながら限界を検証していき、常に
* 試験対象システムに負荷をかけられていて
* ボトルネック部分が特定できている
ような負荷テストを実現する方法が具体的に学べます。
そしてクラウドを使った負荷テストに関して、この本、すごいノウハウのかたまりです。
自分がさんざん悩んだり、人に相談したり、StackOverflow を漁ったりして見つけた情報がいくつも書いてあって、「これを2年前に読みたかった」と何度も思いました。
この本さえあれば、InstanceType ごとのネットワーク帯域制限や、JMeter の If コントローラでの性能低下や、t2 系の CPU クレジット切れでの謎のスループット低下を何時間も何日も調査する必要が無かったのに…。
章立ても、3〜9章の負荷試験の解説のあとに、10章で100ページ以上を使った具体的な事例が書かれていて、実施のイメージを頭の中で具体化できました。
力のかけ具合と抜き具合い、試行錯誤の過程、レポートのまとめかた、開発者との交流方法、どれも参考になります。
あと、個人的にツボだったのが、事例の中で
「t2 系は CPU クレジットを使い切るとバーストしないから気をつけろ」のくだりで
「(これが原因でなにか起きると)なんか俺のせいになるし」の発言。
担当者…苦労してますね…
総じて、良い本でした。
おもてに出にくく属人化しやすい負荷試験をよくぞここまでまとめてくれました。
職場で「負荷テストは適当に JMeter まわしとけばいいですよね」と言っている人達に見える場所に置いています。
Kindle 価格: | ¥4,180 (税込) |
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Amazon Web Services負荷試験入門 ――クラウドの性能の引き出し方がわかる Software Design plus Kindle版
(概要)
クラウド環境(Amazon Web Services)を前提としてアプリケーション開発し,それを運用することはごく普通なものになりました。しかし,実際にシステムをサービス開始してみると,想定したパフォーマンスを達成できないことが多々あります。それはシステムにかかる負荷を正しく見積もっていないことが原因があるようです。本書では,クラウド環境での負荷試験のやり方や評価方法を解説します。筆者たちはさまざまなクラウド環境でのアプリケーションの開発と運用で実績を積んできました。その成果を余すことなく1冊にまとめました。
(こんな方におすすめ)
・AWSやオンプレミス,クラウドハイブリッド環境でシステムのパフォーマンスを測りたい方に
(目次)
Chapter 1 間違いだらけの負荷試験とWebシステムの失敗事例
Chapter 2 Webシステムの設計手法
Chapter 3 負荷試験の基本知識
Chapter 4 負荷試験のツール
Chapter 5 負荷試験の計画
Chapter 6 負荷試験の準備
Chapter 7 負荷試験の実施1~試験実施とボトルネックの特定
Chapter 8 負荷試験の実施2~原因分析とシステムの改善作業
Chapter 9 負荷試験レポートの作成
Chapter 10 負荷試験実践のケーススタディ
Chapter 11 巻末資料
クラウド環境(Amazon Web Services)を前提としてアプリケーション開発し,それを運用することはごく普通なものになりました。しかし,実際にシステムをサービス開始してみると,想定したパフォーマンスを達成できないことが多々あります。それはシステムにかかる負荷を正しく見積もっていないことが原因があるようです。本書では,クラウド環境での負荷試験のやり方や評価方法を解説します。筆者たちはさまざまなクラウド環境でのアプリケーションの開発と運用で実績を積んできました。その成果を余すことなく1冊にまとめました。
(こんな方におすすめ)
・AWSやオンプレミス,クラウドハイブリッド環境でシステムのパフォーマンスを測りたい方に
(目次)
Chapter 1 間違いだらけの負荷試験とWebシステムの失敗事例
Chapter 2 Webシステムの設計手法
Chapter 3 負荷試験の基本知識
Chapter 4 負荷試験のツール
Chapter 5 負荷試験の計画
Chapter 6 負荷試験の準備
Chapter 7 負荷試験の実施1~試験実施とボトルネックの特定
Chapter 8 負荷試験の実施2~原因分析とシステムの改善作業
Chapter 9 負荷試験レポートの作成
Chapter 10 負荷試験実践のケーススタディ
Chapter 11 巻末資料
- 言語日本語
- 出版社技術評論社
- 発売日2017/9/23
- ファイルサイズ42577 KB
この本はファイルサイズが大きいため、ダウンロードに時間がかかる場合があります。Kindle端末では、この本を3G接続でダウンロードすることができませんので、Wi-Fiネットワークをご利用ください。
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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商品の説明
出版社からのコメント
クラウドにしたけど、思ったようなパフォーマンスが出ない――ちゃんと負荷試験をしましたか? 本書でしっかりテストしてみましょう!
著者について
■仲川樽八(なかがわたるはち)
1975年、広島県生まれ。広島学院中学校・高等学校卒、京都大学情報学部中退。
共著の森下氏が大学院まで通ったのと同じ6年間を学部生として過ごしたのち、森下氏を含めた同期の学生がITベンチャー企業として立ち上げた株式会社ゆめみに拾われて入社。その後、17年間ずっとWebシステムの開発を続ける。現在は直接自分が開発に携わったシステムにとどまらず、会社内の複数の開発案件に関して横断的に設計レビューから負荷試験の実施まで担当している。大学を中退、電気街でパーツを購入してサーバを構築してサービスを開始、鳴り止まないアラートと苦情への対応のため会社に泊まり込み続き……という時代には想像ができなかったが、いつしか会社の成長とともに結婚して4人の娘の父親となることができた。安定したシステムの構築がエンジニアを幸せにしてくれることを身をもって実感する1人。最近の関心事は、エンジニア35歳限界説に対する反例を作るために筋トレを続けること。
■森下健(もりしたけん)
1976年、福岡県生まれ。東京都立西高校、京都大学大学院情報学研究科卒。
2001年に大学院卒業後、株式会社ゆめみに創業時メンバーとして参加し、黎明期の携帯デバイス向けECサービス等の開発に従事する。その後、世間の流れに従い、スマートフォン向けサービスやアプリ開発、機械学習を活用したサービス開発などに携わる。 休日はゲームや酒のツマミを作ることが一番の楽しみ。子どもの頃からの夢としてテーブルトークRPGのゲームマスターをコンピュータにさせたいと思っており、近年のAIブームの勢いでぜひ実現してほしいと願っている。
1975年、広島県生まれ。広島学院中学校・高等学校卒、京都大学情報学部中退。
共著の森下氏が大学院まで通ったのと同じ6年間を学部生として過ごしたのち、森下氏を含めた同期の学生がITベンチャー企業として立ち上げた株式会社ゆめみに拾われて入社。その後、17年間ずっとWebシステムの開発を続ける。現在は直接自分が開発に携わったシステムにとどまらず、会社内の複数の開発案件に関して横断的に設計レビューから負荷試験の実施まで担当している。大学を中退、電気街でパーツを購入してサーバを構築してサービスを開始、鳴り止まないアラートと苦情への対応のため会社に泊まり込み続き……という時代には想像ができなかったが、いつしか会社の成長とともに結婚して4人の娘の父親となることができた。安定したシステムの構築がエンジニアを幸せにしてくれることを身をもって実感する1人。最近の関心事は、エンジニア35歳限界説に対する反例を作るために筋トレを続けること。
■森下健(もりしたけん)
1976年、福岡県生まれ。東京都立西高校、京都大学大学院情報学研究科卒。
2001年に大学院卒業後、株式会社ゆめみに創業時メンバーとして参加し、黎明期の携帯デバイス向けECサービス等の開発に従事する。その後、世間の流れに従い、スマートフォン向けサービスやアプリ開発、機械学習を活用したサービス開発などに携わる。 休日はゲームや酒のツマミを作ることが一番の楽しみ。子どもの頃からの夢としてテーブルトークRPGのゲームマスターをコンピュータにさせたいと思っており、近年のAIブームの勢いでぜひ実現してほしいと願っている。
登録情報
- ASIN : B075SV3VN3
- 出版社 : 技術評論社 (2017/9/23)
- 発売日 : 2017/9/23
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 42577 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 577ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 199,072位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- - 7,939位工学 (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年9月23日に日本でレビュー済み
2020年12月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
Jmeter導入についての観点を調べるには貴重な和訳本です。
2017年12月29日に日本でレビュー済み
教科書的にはシステムテストの一環として、開発終了時に行われることが多い「負荷試験」。
短納期になりがちなWebシステム開発のプロジェクトでは省略されがちですが、それで痛い目に遭った人も多いはず。
また、Web上にツールの使い方の解説などはあっても、なかなか体系だった解説はまとまっておらず、
自分たちの方法が果たして妥当なのかと不安になりながら、負荷試験を行っていた人も多いのではないでしょうか。
本書の特徴は、クラウド(AWS)を前提とした上での負荷試験の基本的な考え方を示していることにあります。
クラウド環境では、サーバ環境の構築や構成変更(スケールアップ・スケールアウトなど)が短時間で柔軟に行えます。
このため、オンプレミス時代の負荷試験とは、目的やアプローチが大きく変わってきます。
・負荷試験の目的に、スケール性を持つことの確認やスケール特性の把握が加わる(3章 P.38)
・構成要素を足しながら、探索的にボトルネックの特定と改善のPDCAサイクルを回すことが出来る(5~9章)
・システム完成前の、早期タイミングでの負荷試験実施が不確定要素の解消のために有効(P.98, P.126 など)
もちろん、スループットやレイテンシなどといった基本事項やツールの使い方(JMeter, topなど)については
クラウド・オンプレミスのどちらでも変わりませんし、Web上を探せば似たような記事も見つかるでしょう。
そういった表層的な話ではなく、「クラウドという前提条件」において「何を」目的として「どのように」試験するのかという
工学的アプローチの在り方を具体的に示してくれる本書は、負荷試験を業務として行わない人にも得るものがあると思います。
短納期になりがちなWebシステム開発のプロジェクトでは省略されがちですが、それで痛い目に遭った人も多いはず。
また、Web上にツールの使い方の解説などはあっても、なかなか体系だった解説はまとまっておらず、
自分たちの方法が果たして妥当なのかと不安になりながら、負荷試験を行っていた人も多いのではないでしょうか。
本書の特徴は、クラウド(AWS)を前提とした上での負荷試験の基本的な考え方を示していることにあります。
クラウド環境では、サーバ環境の構築や構成変更(スケールアップ・スケールアウトなど)が短時間で柔軟に行えます。
このため、オンプレミス時代の負荷試験とは、目的やアプローチが大きく変わってきます。
・負荷試験の目的に、スケール性を持つことの確認やスケール特性の把握が加わる(3章 P.38)
・構成要素を足しながら、探索的にボトルネックの特定と改善のPDCAサイクルを回すことが出来る(5~9章)
・システム完成前の、早期タイミングでの負荷試験実施が不確定要素の解消のために有効(P.98, P.126 など)
もちろん、スループットやレイテンシなどといった基本事項やツールの使い方(JMeter, topなど)については
クラウド・オンプレミスのどちらでも変わりませんし、Web上を探せば似たような記事も見つかるでしょう。
そういった表層的な話ではなく、「クラウドという前提条件」において「何を」目的として「どのように」試験するのかという
工学的アプローチの在り方を具体的に示してくれる本書は、負荷試験を業務として行わない人にも得るものがあると思います。
2020年1月26日に日本でレビュー済み
読み進めやすく、何より「さっそく実践してみたい!」とモチベーションが上がる一冊でした。
数年前、著者の方と同じ職場におり、徳の高い方でしたので、その方の著作であれば是非とも読みたいと思ったのが購入のキッカケです。
(負荷試験の実施の場面ではなく大変恐縮なのですが)
私が読みやすいと感じた点は、
重要な点が箇条書きで記載され、その直後にその各項目についての詳細が続けて書かれているところです。
記載されている前提条件となる環境などは2020年現在と比較すると古い部分もあるとは思いますが、基本的な考え方を学習できる良書です。
樽八さんの次回作にも期待しています。
数年前、著者の方と同じ職場におり、徳の高い方でしたので、その方の著作であれば是非とも読みたいと思ったのが購入のキッカケです。
(負荷試験の実施の場面ではなく大変恐縮なのですが)
私が読みやすいと感じた点は、
重要な点が箇条書きで記載され、その直後にその各項目についての詳細が続けて書かれているところです。
記載されている前提条件となる環境などは2020年現在と比較すると古い部分もあるとは思いますが、基本的な考え方を学習できる良書です。
樽八さんの次回作にも期待しています。
2017年11月8日に日本でレビュー済み
最初の3章で負荷試験についての基本的な考え方を学ぶことができますので
最初の3章だけでも読むことをお勧めします。
とくに、前半は実際に負荷試験はしないけどという人にも有用。
(なので、読んですぐPMの人に貸し出した)
後半では、実際にAWSの環境で負荷試験を行っていくのですが、
いきなり最終的にこのように負荷をかけました!という説明ではなく
ステップバイステップで徐々にまずはこういった所を見ておこうと
進めていっており分かり易い。
この本のとおり進めていく研修とかあっても良いかも
最初の3章だけでも読むことをお勧めします。
とくに、前半は実際に負荷試験はしないけどという人にも有用。
(なので、読んですぐPMの人に貸し出した)
後半では、実際にAWSの環境で負荷試験を行っていくのですが、
いきなり最終的にこのように負荷をかけました!という説明ではなく
ステップバイステップで徐々にまずはこういった所を見ておこうと
進めていっており分かり易い。
この本のとおり進めていく研修とかあっても良いかも
2017年12月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
最初にクラウドの負荷試験はオンプレミスとは違うと書いておきながら、後に書いてあるのはオンプレミスの負荷試験の手法ばかり。それはAWSが知ってれば当たり前の話。
2018年4月6日に日本でレビュー済み
オンプレミス(と言ってもVMWareで仮想化された環境)での負荷試験を本格的に行うにあたって、本書を参考に試験を実施しましたが、とてもわかりやすく良い本だと感じました。