現代思想の人類学特集。
このレビューを書くのが、とても難しい。
それは、このレビューを書くことが人間というのをきちんと捉えているという誤解を自分の中で作っているような気がしてしまうからでもある。それでも、あえてこれを書くのは、レビューが全くついていない本書が埋もれずにしっかりと多くの人に読まれることを恐縮ながら、一読者として望むからである。
本書を読むことで、最新の人類学が人間ではないとされてきた自然なるものを含めて脱構築した人間像を捉えていくことが、我々の形を理解していくために必要であることに気がつくことができる。
それは、中沢新一の絶えず自分の思考をなにかとの位置関係に捉えるのではなく、複雑なものを複雑なものにとどめて捉える対象人類学的にな流動的知性を持つことでもあるし、ティム・インゴルドのラインズで紹介されているように、”人間の精神が自然や物質に対して、超越論的立場を取りうることを認めず、人間をも含めた全ての有機物が絡まり合う”(p282)運動を一つの線として、生命の連続性を捉えていく考え方を持つことである。
このような考え方を持つ上で、自らの身体を同時に自然的に作り変えていくことが大切であることは、箭内匡さんの「多自然主義を超えて」を初めてとしたテキストを読むことで、体感できると思う。
自然的な多性に対して開かれるためには、異なるに認識を理性で持つのではなく、身体を変えてそもそも世界を感受する仕方を変えていく必要があるし、そうすることで世界の連続性は回復されるはずなのである。
最後に箭内さんの素敵なクオートを紹介する。
”ピカソはモネの絵画に賛同しなかったかもしれないが、しかし、我々がピカソの絵画とモネの絵画の両方に感動を覚えるのは、どちらもが我々の経験の潜在的可能性と共鳴するからである”(p.206)
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