私たちはデジタル時代を生きています。デジタル技術のお陰でどこでも誰とでも繋がれるようになった
ことや、検索によって即座に解決策や知識を得ることができるようになり、電車に乗っていてもゲーム
によって暇つぶしができるといった大きなメリットを享受できるようになっています。
その反面、集中力は悪化の一途をたどっています。〈はじめに〉では、”デバイスを使う時の集中時間は
平均47秒になっている” と書かれています。その数字の信ぴょう性はともかくとしても、スマホを目に
見えるところに置いていると、ついつい手にしてみたり、SNSやメールをチェックしたりと、何かに
集中することができづらくなっている実感を多くの人が持っているでしょう。
そのことを端的に表しているのが次の描写です。
ジャンプカットを多用したYouTube動画は視覚的に引き付けるが、後から内容を思い出すのは難しい
その場その場では極度に集中できて引き込まれるがゆえに、それが短いスパンで移り変わるために記憶
に残りにくいというのは皮肉な話です。
このことが示唆しているのは、私たちは生産性を追求するあまり、かえって幸福度が下がっていること
です。「集中」イコール「幸福」とは必ずしも言えないにしても、ミハイ・チクセントミハイが提唱し
た「フロー理論」はその相関を示しています。
フローとは、あらゆるスキルを使い、深い満足感が得られるユニークでクリエイティブな体験だ
本書が秀逸なのは、フロー理論をもとにして ”異なる集中状態を表す理論的枠組み” を図式化して説明
している点です。ここでは図表に表せないので文章にします。「熱中度」の高低を縦軸に、「難易度」
の高低を横軸にして四象限を作り、それぞれを次のように命名しています。
没入:難しい活動に熱中している状態
慣れ:さほど難しくない活動に熱中している状態
退屈:あまり難しくない活動にさほど熱中していない状態
不満:難しい活動にまったく熱中していない状態
フローとは、上記の「没入」状態です。スポーツや芸術、あるいは仕事や勉強に打ち込んだことのある
人は、時間の感覚を忘れてその活動にのめり込んだ経験を持っています。だけれども、そのフローは
頻繁に体験できるものではないし、ましてや熟達者であっても人生の多くの時間をフロー状態にいる
ことはできません。
そこから著者が導き出したのが、「リズム」を集中に活用することです。
先の四象限でいうと、「不満」は高ストレスに繋がるためできるだけ避けるとしても、「退屈」と
「慣れ」の状態は、「没入」状態とうまく使い分けるなら有用です。
退屈という言葉にはネガティブな意味が含まれていますが、”静かで動きがない状態” と考えるなら、
著者が言うようにヨガや禅の瞑想が該当します。没入との対極にある退屈は、没入のトリガーになり
得るものであり、この往復を自在に操る術を身に着けることが、集中力と幸福度を高める鍵なのかも
しれません。本書から引用するなら ”休息をとる余裕を持とう” です。
興味深かったのは、慣れの効用を強調していることです。”単純な活動にも大切な役割がある。
さほど難しくない活動に熱中しているとき、人は幸せを感じ、くつろぎ、認知リソースを回復して
いる” と説いています。日常生活の些細なことでいうと、アイロンがけや食器洗いをしているときに
なんともいえない安らかな気持ちになることがあります。もっとクリエイティブに寄った活動を例に
出すなら、散歩が該当します。
繰り返しになりますが、フローを長時間持続させることはできません。だからこそ私たちが注力すべ
きなのは、自分の集中リズムに合わせた1日のスケジュールを立てることです。自分の集中のピーク
時間を知って、集中すべき時にその時間をあわせることです。
デジタルの時代には放っておくとストレス過多で精神のバランスを崩してしまいがちです。本書には
書かれていませんが、自分のキャパシティを超えるフロー状態は健全ではないのかもしれません。
フローよりもリズムを重視して、健康で健全な生活を送るためのヒントがたくさん詰まった書です。
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ATTENTION SPAN(アテンション・スパン) デジタル時代の「集中力」の科学 単行本(ソフトカバー) – 2024/3/26
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購入オプションとあわせ買い
【内容紹介】
池 谷 裕 二 氏(脳研究者・東京大学薬学部教授)推 薦 !
「 IT時代を迎え、集中力のツボは刷新された。
本書はデジタル技術との交流を前提に、現代版「集中力」を 科学的に検証する。今こそ読むべき本だ。」
私たちの集中時間(アテンション・スパン)は、日ごとに短くなっている──。スマホやPCなど、デジタル機器が人間の生活に与える影響を長年考察してきた心理学・情報科学のエキスパートが、独自の研究と最新の学説をもとに解き明かす、デジタル時代の「集中力」の科学。絶え間ないチャットやメール、ウェブ会議、SNSなど、さまざまな刺激に満ちたデジタル環境下で、集中力を統制し、自分に合ったスタイルで「幸福度」も「生産性」も高める方法とは?
デジタル機器なしに、もはや私たちの仕事や生活は考えられません。インターネットは私たちの考え方を大きく変え、Xやインスタグラム、TikTokなどのSNSは新しい交流と娯楽を生み、遠く離れた相手と瞬時に繋がれるZoomなどのウェブ会議ツールは、新しい働き方をもたらしました。
しかしその一方で、膨大なメッセージ、絶え間なく届くポップアップ通知、人間の本能に訴えかけるSNSのアルゴリズムによって、「集中力が長続きしない」「デバイスを使ったマルチタスクでミスが増えた」「不安や不眠などの症状を感じやすくなった」などの悩みを訴える人が世界的に増えています。
本書は、デジタル機器が人間の生活に与える影響を長年調査・研究してきた心理学・情報科学のエキスパートが、独自の研究と最新の学説をもとに、本来私たちの力となるはずのデジタル機器が、なぜ注意散漫やストレスの原因となってしまうのか、その理由をエビデンスとともに丁寧に解き明かします。
具体的には、「マルチタスクはなぜ生産性も幸福度も下げるのか?」「個人のパーソナリティは集中力にどう影響する?」「SNSやTikTok動画、ターゲティング広告はなぜ注意散漫を増幅させるのか?」などの問いに答えるほか、さまざまな刺激に満ちたデジタル環境下で集中力を維持する「主体性」の育み方、注意散漫にならないための「認知リソース」の高め方など、現代科学の最新成果をもとに、自分に合ったスタイルで「生産性」も「幸福度」も叶える方法を示します。注意散漫・集中力低下に悩む方に役立つヒントに満ちた1冊です。
【目次】
はじめに 「集中」の神話を打ち破る
デバイスのせいで集中できない/デジタル世界のパラドックス/デジタル社会と私たちの集中/注意散漫に関する現代の神話/「生産性」から「幸福」へ
■■Ⅰ 集 中 の 構 造 ■■
第1章 限りある認知リソース
私たちの集中と行動/集中のコントロールは難しい/集中のネットワーク/認知リソースの量は限られている/持続的集中と「動的集中」
第2章 集中をめぐる争い
集中をコントロールできないとき/目標達成まで集中を持続させるには?/集中の罠/集中の対象の選び方
第3章 集中のタイプを理解する
集中をめぐる言葉/とらえにくい「フロー」/集中状態の理論的枠組み/1日の集中状態の移り変わり/集中のリズムを知る/人はなぜ注意散漫になるのか/集中度を高めるのは「フロー」より「リズム」
第4章 マルチタスクの真実
マルチタスクとは何か/マルチタスクの2つの視点/「生きた実験室」を作る/集中時間はますます短くなっている/47秒間の集中/仕事モードと休憩モード/デスクワークと集中時間の短縮
第5章 絶え間ない中断がもたらすもの
中断したタスクは記憶に残りやすい/「自己中断」と外部からの中断/中断に伴うコスト/1日77回のメールチェック/メールゾンビから逃げる/「女性のほうが集中度が高い」は本当か
■■Ⅱ 集 中 を 中 断 さ せ る さ ま ざ ま な 力■■
第6章 インターネットの普及と集中力の低下
インターネットの黎明期/楽しい連想/インターネットによる「マインドワンダリング」/プライミングだらけのインターネット/インターネットと私たちの集中
第7章 AIとアルゴリズムの影響
注意散漫に値段がつくとき/「いいね」でわかる性格特性/アルゴリズムは本能に訴える/TikTokの罠/Instagramから逃れられない/アルゴリズムの強み
第8章 デジタルな交流の世界
集中は社会的影響を受けやすい/内集団に向けられる注意/ウェブ上の自己イメージを管理する/社会関係資本の経済/社会的な力による注意散漫/オンラインの人間関係
第9章 パーソナリティは自制にどう影響するか
パーソナリティとインターネット利用の関係/神経症傾向と衝動/誠実な人はメールに過剰反応してしまう/パーソナリティは注意散漫にどう影響するか/睡眠不足の弊害/自制とパーソナリティの関係を知る
第10章 デバイスは幸福感を下げるのか
単純な活動の心地よさ/感情と集中の意外な関係/仕事と幸福感/「努力する集中」と「努力しない集中」/Facebookとリアルの交流、幸福度が高いのは?/マルチタスクはネガティブな感情を生む
第11章 メディアによる集中の条件づけ
1日10時間のスクリーンタイム/カット割りの進化と集中力/ジャンプカットとYouTube/ノンリニア編集とカオス編集/コマーシャルも短く/デジタル世界の「スナック文化」/メディアが集中に与える効果
■■Ⅲ 集 中 、リ ズ ム 、バ ラ ン ス を 整 え る■■
第12章 自由意志、主体性、集中
意識的な行動、自動的な反応、自由意志/デジタル行動の「主体性」を育むには?/奇妙で複雑な相互関係/「主体性」の力で前進する
第13章 「主体性」の力で生活リズムを整える
「主体性」で集中力をコントロールする/デジタル行動のメタ認識/デジタルツールに触れる前に/デジタルな行動を自制する/内省と修正行動/バランスのとれた1日を計画する
第14章 デジタル時代の集中力を育む
デジタルデトックスの先へ/AIと私たちの集中/心理的バランスを高める技術設計/現実世界に集中する/職場環境の未来と私たちの集中/自分に合ったデジタル世界を創造する
『はじめに』より
デジタル化は私たちの考え方や働き方のみならず、集中力のあり方も根本的に変えた。私たちが日常的に使うテクノロジー、文化的・社会的環境、個々人のパーソナリティなど、さまざまな要素が複雑に絡み合い、集中しにくい状況を作り出すようになったいま、幸せを保ち、生産的で、充実した生活を送るための新しい理論的な枠組みが必要だ。
これまで集中力と生産性を確実に高めると言われてきた方法は、実は間違った前提に立っていて効果がない。集中はスイッチのオンとオフのような二元論ではなく、もっと多様な形態であるととらえるべきだ。
本書では、1日を通して集中力の維持に必要な認知リソースをバランスよく維持する上で、集中のそれぞれのタイプに(「没入」や「慣れ」だけでなく、「退屈」にさえ)個別の意味と目的があることを説明する。没入だけが最適な状態ではなく、精神的なリソースを使いすぎない、ほかのタイプと組み合わせることで、最も効果が上がるのだ。
*
長年、私の研究には、多くの同僚や学生、研究者から賛同の声が寄せられてきた。本書を読めば、おそらくみなさんも集中力に関する自分の認識に必要な科学的根拠を得ることができるだろう。
本書は、なぜデジタル世界に生きる私たちは集中するのがこれほど難しいのか、なぜ簡単に気が散ってほかのことをしてしまうのか、そしてデバイスを使うときに、なぜすぐに集中先が移り変わるのか、といった問題を理解してもらうために書いた。
本当の変化は意識することから始まる。集中をコントロールする「主体性」を育てるには、私たちがなぜいまのように行動するのかを理解し、軌道修正する必要がある。
健康的な精神のバランスを実現したいなら、まず、認知リソースを補充しつづけることだ。その副産物として生産性が向上する。そして私たちは、デジタル化が加速する世界でも、バランスをとることができると信じている。
池 谷 裕 二 氏(脳研究者・東京大学薬学部教授)推 薦 !
「 IT時代を迎え、集中力のツボは刷新された。
本書はデジタル技術との交流を前提に、現代版「集中力」を 科学的に検証する。今こそ読むべき本だ。」
私たちの集中時間(アテンション・スパン)は、日ごとに短くなっている──。スマホやPCなど、デジタル機器が人間の生活に与える影響を長年考察してきた心理学・情報科学のエキスパートが、独自の研究と最新の学説をもとに解き明かす、デジタル時代の「集中力」の科学。絶え間ないチャットやメール、ウェブ会議、SNSなど、さまざまな刺激に満ちたデジタル環境下で、集中力を統制し、自分に合ったスタイルで「幸福度」も「生産性」も高める方法とは?
デジタル機器なしに、もはや私たちの仕事や生活は考えられません。インターネットは私たちの考え方を大きく変え、Xやインスタグラム、TikTokなどのSNSは新しい交流と娯楽を生み、遠く離れた相手と瞬時に繋がれるZoomなどのウェブ会議ツールは、新しい働き方をもたらしました。
しかしその一方で、膨大なメッセージ、絶え間なく届くポップアップ通知、人間の本能に訴えかけるSNSのアルゴリズムによって、「集中力が長続きしない」「デバイスを使ったマルチタスクでミスが増えた」「不安や不眠などの症状を感じやすくなった」などの悩みを訴える人が世界的に増えています。
本書は、デジタル機器が人間の生活に与える影響を長年調査・研究してきた心理学・情報科学のエキスパートが、独自の研究と最新の学説をもとに、本来私たちの力となるはずのデジタル機器が、なぜ注意散漫やストレスの原因となってしまうのか、その理由をエビデンスとともに丁寧に解き明かします。
具体的には、「マルチタスクはなぜ生産性も幸福度も下げるのか?」「個人のパーソナリティは集中力にどう影響する?」「SNSやTikTok動画、ターゲティング広告はなぜ注意散漫を増幅させるのか?」などの問いに答えるほか、さまざまな刺激に満ちたデジタル環境下で集中力を維持する「主体性」の育み方、注意散漫にならないための「認知リソース」の高め方など、現代科学の最新成果をもとに、自分に合ったスタイルで「生産性」も「幸福度」も叶える方法を示します。注意散漫・集中力低下に悩む方に役立つヒントに満ちた1冊です。
【目次】
はじめに 「集中」の神話を打ち破る
デバイスのせいで集中できない/デジタル世界のパラドックス/デジタル社会と私たちの集中/注意散漫に関する現代の神話/「生産性」から「幸福」へ
■■Ⅰ 集 中 の 構 造 ■■
第1章 限りある認知リソース
私たちの集中と行動/集中のコントロールは難しい/集中のネットワーク/認知リソースの量は限られている/持続的集中と「動的集中」
第2章 集中をめぐる争い
集中をコントロールできないとき/目標達成まで集中を持続させるには?/集中の罠/集中の対象の選び方
第3章 集中のタイプを理解する
集中をめぐる言葉/とらえにくい「フロー」/集中状態の理論的枠組み/1日の集中状態の移り変わり/集中のリズムを知る/人はなぜ注意散漫になるのか/集中度を高めるのは「フロー」より「リズム」
第4章 マルチタスクの真実
マルチタスクとは何か/マルチタスクの2つの視点/「生きた実験室」を作る/集中時間はますます短くなっている/47秒間の集中/仕事モードと休憩モード/デスクワークと集中時間の短縮
第5章 絶え間ない中断がもたらすもの
中断したタスクは記憶に残りやすい/「自己中断」と外部からの中断/中断に伴うコスト/1日77回のメールチェック/メールゾンビから逃げる/「女性のほうが集中度が高い」は本当か
■■Ⅱ 集 中 を 中 断 さ せ る さ ま ざ ま な 力■■
第6章 インターネットの普及と集中力の低下
インターネットの黎明期/楽しい連想/インターネットによる「マインドワンダリング」/プライミングだらけのインターネット/インターネットと私たちの集中
第7章 AIとアルゴリズムの影響
注意散漫に値段がつくとき/「いいね」でわかる性格特性/アルゴリズムは本能に訴える/TikTokの罠/Instagramから逃れられない/アルゴリズムの強み
第8章 デジタルな交流の世界
集中は社会的影響を受けやすい/内集団に向けられる注意/ウェブ上の自己イメージを管理する/社会関係資本の経済/社会的な力による注意散漫/オンラインの人間関係
第9章 パーソナリティは自制にどう影響するか
パーソナリティとインターネット利用の関係/神経症傾向と衝動/誠実な人はメールに過剰反応してしまう/パーソナリティは注意散漫にどう影響するか/睡眠不足の弊害/自制とパーソナリティの関係を知る
第10章 デバイスは幸福感を下げるのか
単純な活動の心地よさ/感情と集中の意外な関係/仕事と幸福感/「努力する集中」と「努力しない集中」/Facebookとリアルの交流、幸福度が高いのは?/マルチタスクはネガティブな感情を生む
第11章 メディアによる集中の条件づけ
1日10時間のスクリーンタイム/カット割りの進化と集中力/ジャンプカットとYouTube/ノンリニア編集とカオス編集/コマーシャルも短く/デジタル世界の「スナック文化」/メディアが集中に与える効果
■■Ⅲ 集 中 、リ ズ ム 、バ ラ ン ス を 整 え る■■
第12章 自由意志、主体性、集中
意識的な行動、自動的な反応、自由意志/デジタル行動の「主体性」を育むには?/奇妙で複雑な相互関係/「主体性」の力で前進する
第13章 「主体性」の力で生活リズムを整える
「主体性」で集中力をコントロールする/デジタル行動のメタ認識/デジタルツールに触れる前に/デジタルな行動を自制する/内省と修正行動/バランスのとれた1日を計画する
第14章 デジタル時代の集中力を育む
デジタルデトックスの先へ/AIと私たちの集中/心理的バランスを高める技術設計/現実世界に集中する/職場環境の未来と私たちの集中/自分に合ったデジタル世界を創造する
『はじめに』より
デジタル化は私たちの考え方や働き方のみならず、集中力のあり方も根本的に変えた。私たちが日常的に使うテクノロジー、文化的・社会的環境、個々人のパーソナリティなど、さまざまな要素が複雑に絡み合い、集中しにくい状況を作り出すようになったいま、幸せを保ち、生産的で、充実した生活を送るための新しい理論的な枠組みが必要だ。
これまで集中力と生産性を確実に高めると言われてきた方法は、実は間違った前提に立っていて効果がない。集中はスイッチのオンとオフのような二元論ではなく、もっと多様な形態であるととらえるべきだ。
本書では、1日を通して集中力の維持に必要な認知リソースをバランスよく維持する上で、集中のそれぞれのタイプに(「没入」や「慣れ」だけでなく、「退屈」にさえ)個別の意味と目的があることを説明する。没入だけが最適な状態ではなく、精神的なリソースを使いすぎない、ほかのタイプと組み合わせることで、最も効果が上がるのだ。
*
長年、私の研究には、多くの同僚や学生、研究者から賛同の声が寄せられてきた。本書を読めば、おそらくみなさんも集中力に関する自分の認識に必要な科学的根拠を得ることができるだろう。
本書は、なぜデジタル世界に生きる私たちは集中するのがこれほど難しいのか、なぜ簡単に気が散ってほかのことをしてしまうのか、そしてデバイスを使うときに、なぜすぐに集中先が移り変わるのか、といった問題を理解してもらうために書いた。
本当の変化は意識することから始まる。集中をコントロールする「主体性」を育てるには、私たちがなぜいまのように行動するのかを理解し、軌道修正する必要がある。
健康的な精神のバランスを実現したいなら、まず、認知リソースを補充しつづけることだ。その副産物として生産性が向上する。そして私たちは、デジタル化が加速する世界でも、バランスをとることができると信じている。
- 本の長さ364ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BP 日本経済新聞出版
- 発売日2024/3/26
- 寸法18.8 x 12.8 x 2.1 cm
- ISBN-104296117335
- ISBN-13978-4296117338
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出版社より
商品の説明
著者について
グロリア・マーク
心理学者・情報科学者。カリフォルニア大学アーバイン校総長特任教授。
コロンビア大学で心理学の博士号取得後、約20年にわたりデジタルメディアが人間の生活に与える影響を研究する。主な研究テーマは、マルチタスク、集中の中断、デジタル機器の使用にともなう感情など。これまでに200以上の論文を発表し、テクノロジーに関する優れた学術研究に与えられる「グーグル・リサーチ・アワード」を2度受賞。本書が初の著書となる。
依田卓巳
翻訳家。
主な訳書に『使える脳の鍛え方』(ピーター・ブラウン他著)、『チャヴ』(オーウェン・ジョーンズ著)、『AGELESS(エイジレス)』(アンドリュー・スティール著、共訳)、『ザ・コピーライティング』(ジョン・ケープルズ著、共訳)など。
心理学者・情報科学者。カリフォルニア大学アーバイン校総長特任教授。
コロンビア大学で心理学の博士号取得後、約20年にわたりデジタルメディアが人間の生活に与える影響を研究する。主な研究テーマは、マルチタスク、集中の中断、デジタル機器の使用にともなう感情など。これまでに200以上の論文を発表し、テクノロジーに関する優れた学術研究に与えられる「グーグル・リサーチ・アワード」を2度受賞。本書が初の著書となる。
依田卓巳
翻訳家。
主な訳書に『使える脳の鍛え方』(ピーター・ブラウン他著)、『チャヴ』(オーウェン・ジョーンズ著)、『AGELESS(エイジレス)』(アンドリュー・スティール著、共訳)、『ザ・コピーライティング』(ジョン・ケープルズ著、共訳)など。
登録情報
- 出版社 : 日経BP 日本経済新聞出版 (2024/3/26)
- 発売日 : 2024/3/26
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 364ページ
- ISBN-10 : 4296117335
- ISBN-13 : 978-4296117338
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.1 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 16,628位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 33位環境とビジネス
- - 34位情報社会
- - 37位ビジネスマナー (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2024年4月29日に日本でレビュー済み
2024年5月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
Amazonで延々とおすすめの商品を探したり、YouTubeを見たりと、我々の注意は頻繁に引き裂かれます。この本は、そうした注意や集中について、実験的な結果も踏まえて体系的にまとめた一冊です。
ネットサーフィンを楽しみすぎて本当に集中したいことに集中できず、その対処法を知りたいと思った人は、この本に興味を持つでしょう。しかし、その期待を抱いて本書を読むと、少々がっかりするかもしれません。
本書は三部構成になっており、第一部では注意/集中とは何かを述べ、現実での注意の様子を描いています。第二部では、メール、SNS、広告など注意を削ぐ力が存在する「アテンション・エコノミー」の世界を描いています。第三部では、注意を「主体的」に選択できるようにするための方策について論じています。
第三部で挙げている対処法としては、行動に移す前に「本当に必要なことかを問いかける」ことや、出かける10分前だけネットを見るといった「縛り」が効果的であると述べています。また、心のエネルギーを使い果たさないようにバランスをとったスケジュールを考えることも重要だとしています。しかし、これらの手法がどの程度効果的なのかについてのエビデンスは示されていません(例外としては、マイクロソフト・リサーチが行った約30人の実験)。
YouTubeを見ることによる気晴らしの側面にも触れていますが、結局のところ、どのようにこれらをマネジメントすれば心豊かに過ごせるのかについては具体的な答えが示されていません。エビデンスに基づいた対処法を知りたかった身としては、肩透かしを食らった感があります。
それを除けば、第一部は個人的には非常に興味深い内容でした。注意の持続時間が年々短くなっているという研究結果 (2016年の研究では注意の持続時間が1分にも満たないという) などには、知的好奇心を刺激されました。著者は実際の職場からデータを測定しており、より現実的な示唆を与えようと奮闘している点が印象的でした。
ただし、第二部は冗長に感じました。注意を削ぐ社会の現状は十分に理解できたので、早くその対処法を教えてほしいと感じました。しかし、最終的に提示された対処法が陳腐であったため、読後感はやや物足りないものでした。
ネットサーフィンを楽しみすぎて本当に集中したいことに集中できず、その対処法を知りたいと思った人は、この本に興味を持つでしょう。しかし、その期待を抱いて本書を読むと、少々がっかりするかもしれません。
本書は三部構成になっており、第一部では注意/集中とは何かを述べ、現実での注意の様子を描いています。第二部では、メール、SNS、広告など注意を削ぐ力が存在する「アテンション・エコノミー」の世界を描いています。第三部では、注意を「主体的」に選択できるようにするための方策について論じています。
第三部で挙げている対処法としては、行動に移す前に「本当に必要なことかを問いかける」ことや、出かける10分前だけネットを見るといった「縛り」が効果的であると述べています。また、心のエネルギーを使い果たさないようにバランスをとったスケジュールを考えることも重要だとしています。しかし、これらの手法がどの程度効果的なのかについてのエビデンスは示されていません(例外としては、マイクロソフト・リサーチが行った約30人の実験)。
YouTubeを見ることによる気晴らしの側面にも触れていますが、結局のところ、どのようにこれらをマネジメントすれば心豊かに過ごせるのかについては具体的な答えが示されていません。エビデンスに基づいた対処法を知りたかった身としては、肩透かしを食らった感があります。
それを除けば、第一部は個人的には非常に興味深い内容でした。注意の持続時間が年々短くなっているという研究結果 (2016年の研究では注意の持続時間が1分にも満たないという) などには、知的好奇心を刺激されました。著者は実際の職場からデータを測定しており、より現実的な示唆を与えようと奮闘している点が印象的でした。
ただし、第二部は冗長に感じました。注意を削ぐ社会の現状は十分に理解できたので、早くその対処法を教えてほしいと感じました。しかし、最終的に提示された対処法が陳腐であったため、読後感はやや物足りないものでした。
2024年5月5日に日本でレビュー済み
最近集中力が続かない。仕事でのミスも増えた。以前楽に読めていた新聞や本が読めなくなった。一方で、寝る前に終業前に見たメールの内容を頭の中で反芻してしまう。なぜだろうと考えてみたら、とにかく仕事でもプライベートでも、スマホやPCなどデジタルツールを手にしていない時間がほとんどなく、打ち合わせもオンラインになって、何かに集中しようとしても、ひっきりなしにチャットや膨大なメール通知、会議15分前を知らせる通知などで注意散漫になっていることが理由ではないかと思うに至った。
この本によると、集中力の源となる人間の認知リソースは、補充するための活動をしなければすぐに枯渇してしまうのだという。特にマルチタスクで同時に複数のことに気を向けているとこの認知リソースは急速に消費されるという。その一方で、例えばキャンディクラッシュやソリティアなどのオンラインできる単純なゲームは、認知リソースを補うという指摘は、ゲームは悪、というイメージの強かった世代として、とても新鮮だ。
なぜなら人間は、頭を使わない単純な活動(例えば、リアルな活動ではアイロンがけや靴下の左右をそろえるといったことも幸福度を上げるそうだ!)で、幸福を感じることが明らかになっているからだ。そして幸福を感じることで人間は認知リソースを補充できるのだという指摘は、自分の実感にもすごく沿うものだった。
どうすれば集中力を高められるかのハウツーを示した実践の本、というより、デジタル環境下での人間の集中力の現状を非常に精緻に分析し、その対応を示した誠実な本という印象だが、ところどころに記される著者自身の体験や実感などもクスリとさせられ、楽しんで読めた。最先端の研究成果も豊富に盛り込まれている。スマホ時代の集中力の科学の最前線というべきユニークな本。
この本によると、集中力の源となる人間の認知リソースは、補充するための活動をしなければすぐに枯渇してしまうのだという。特にマルチタスクで同時に複数のことに気を向けているとこの認知リソースは急速に消費されるという。その一方で、例えばキャンディクラッシュやソリティアなどのオンラインできる単純なゲームは、認知リソースを補うという指摘は、ゲームは悪、というイメージの強かった世代として、とても新鮮だ。
なぜなら人間は、頭を使わない単純な活動(例えば、リアルな活動ではアイロンがけや靴下の左右をそろえるといったことも幸福度を上げるそうだ!)で、幸福を感じることが明らかになっているからだ。そして幸福を感じることで人間は認知リソースを補充できるのだという指摘は、自分の実感にもすごく沿うものだった。
どうすれば集中力を高められるかのハウツーを示した実践の本、というより、デジタル環境下での人間の集中力の現状を非常に精緻に分析し、その対応を示した誠実な本という印象だが、ところどころに記される著者自身の体験や実感などもクスリとさせられ、楽しんで読めた。最先端の研究成果も豊富に盛り込まれている。スマホ時代の集中力の科学の最前線というべきユニークな本。
2024年5月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
□概要
本書は、カリフォルニア大学アーバイン校の総長特任教授で情報科学を専門とする、グロリア・マーク博士の著書です。本書は、人間が集中する仕組みを解明し、デジタルデバイスがあふれる現代において、集中力を高める方法を提示してくれます。本書の最終的な目標は、集中力を高めることで精神的な活力を蓄え”最大の幸福を実現すること”です。
□所感
著者が科学の道に進む前の職業は画家とのことです。デジタルデバイスから離れて過ごす時間を、美術の余白に例えるなど、画家特有の視点からみた内容は特に興味深く思えました。
□良かった点
・人間の集中力が有限のリソースであること。そのリソースを失わせる行為や回復させるための方法が科学的根拠とともに紹介されています。集中力を高めるのに役立つ具体的な方法が数多くあり、私もいくつか取り入れ成果を実感しています。
・著者の研究スタイルは文など机上の理論から導き出したものだけでなく、現場で確認することを大切にしていて、説得力があります。
□残念な点(あくまで個人的な所感です)
・私のKindleの最初のページで本を読み終えるまで12時間6分と表示されており、それなりの長さがあります。3部構成13章の構成で充実した内容と言えますが、途中で主題を見失いそうになりました。私は長い本は得意なほうだと思いますが、この本は読み進めること自体に集中力を試されているのではないかと思うほど読みづらさを感じました。
・せめて各部ごとにまとめを付けてもらえればより読みやすくなっていたと思います。読者側の対策として、目次を印刷するなどすれば現在読み勧めている位置を確認することで、迷子になることを防げるのではないでしょうか。
本書は、カリフォルニア大学アーバイン校の総長特任教授で情報科学を専門とする、グロリア・マーク博士の著書です。本書は、人間が集中する仕組みを解明し、デジタルデバイスがあふれる現代において、集中力を高める方法を提示してくれます。本書の最終的な目標は、集中力を高めることで精神的な活力を蓄え”最大の幸福を実現すること”です。
□所感
著者が科学の道に進む前の職業は画家とのことです。デジタルデバイスから離れて過ごす時間を、美術の余白に例えるなど、画家特有の視点からみた内容は特に興味深く思えました。
□良かった点
・人間の集中力が有限のリソースであること。そのリソースを失わせる行為や回復させるための方法が科学的根拠とともに紹介されています。集中力を高めるのに役立つ具体的な方法が数多くあり、私もいくつか取り入れ成果を実感しています。
・著者の研究スタイルは文など机上の理論から導き出したものだけでなく、現場で確認することを大切にしていて、説得力があります。
□残念な点(あくまで個人的な所感です)
・私のKindleの最初のページで本を読み終えるまで12時間6分と表示されており、それなりの長さがあります。3部構成13章の構成で充実した内容と言えますが、途中で主題を見失いそうになりました。私は長い本は得意なほうだと思いますが、この本は読み進めること自体に集中力を試されているのではないかと思うほど読みづらさを感じました。
・せめて各部ごとにまとめを付けてもらえればより読みやすくなっていたと思います。読者側の対策として、目次を印刷するなどすれば現在読み勧めている位置を確認することで、迷子になることを防げるのではないでしょうか。