この本を読みながら、アメリカのスタートアップ会社の立ち上がりのすごさに驚く。培養肉を作るそれぞれの起業家の生い立ちから、書かれていて、なぜ培養肉を作ろうとしたのかという動機、そして、アイデアが浮かんで、技術の習得、作る手法の確立、パートナーを見つけ、投資家を見つける。そして、支援する人たちの層の厚さに驚くばかりだ。そして、アメリカは肉食社会であるがゆえに培養肉が急速に要求されていることを痛感した。
大豆たんぱく質を使った肉を、フェイクミートと呼び、肉筋組織から作った培養肉を、クリーンミートと呼ぶ。ここの主題は、クリーンミートに関わる起業が描かれている。
クリーンミートを予言したのは、1931年 イギリスのチャーチルであり、50年後と言うエッセイの中で、「人類は胸肉や手羽肉を食べるために、ニワトリを丸ごと育てるなんてばかなことはやめて、それぞれの部位をふさわしい培地で、別々に培養するだろう」と書いた。
クリーンミートが要望される背景は、
①食料が足りなくなる；世界の人口が、2019年は77億人であり、2050年には、100億人近くに予想されている。そして、経済の進展で所得が増えることで、今のようなアメリカの肉食が、世界に普及したら、「肉」が供給できなくなる。１kgの肉を作るのに、水、資料としての穀物、穀物用の畑、飼育用の牧場がいり、それが追いつかなくなる。
②環境が破壊される；牛のために、牧場と飼料の栽培などの面積の拡大することで、森林が破壊される。畜産の持つ排泄物によって、河川が汚染され、牛のゲップが、地球温暖化ガスを排出する。
③安全・健康被害が起こる。感染症の源は、動物から起こり、畜産の密集化した飼育が影響受ける。鳥インフルエンザは、スペイン風邪の元だった。抗生物質を与えて、病原菌を抑えているが、抗生物質がきかなくなる。感染症が絶え間なく起こる原因が増加する。
④動物愛護；動物を殺してまで、食べたくないというアメリカやイギリスでのでのヴィーガンの増加。Veagan,Vegetarian,Flexitarianと言う様々な人が増えてきている。ヴィーガンは、アメリカでは2014年人口の1％だったが、2017年 6％になった。
そして、このコロナ騒動の中で、フェイクミート、クリーンミートが急速に増えてきている。
2009年 オランダのマーストリヒト大学、マークポスト教授が「マウスの筋肉の試験管培養」に成功。Googleの共同創業者サーゲイブリンが、それに積極的に投資した。マークポストは、牛の筋組織の培養を始める。2013年 マークポストはロンドンで、培養肉ハンバーグの試食会を行う。１枚のハンバーグが日本円で3500万円かかった。培養するのに牛の血清を使ったからだ。その後、牛の血清を使わないで培養することができるようになっていく。
リチャードブランソンは、培養肉会社に投資するときに、「動物を殺して食べていたなんて、祖父母の時代はなんて野蛮だったろう」と言われると言う。
そして、肉食の会社タイソンフーズ、食料会社カーギルも培養肉生産に投資する。
バレティとジェノベーゼが、培養肉会社を設立したのが、2015年。その会社の名前が、現在メンフィスミートと言われる。2015年12月に培養ハンバーグを発表。培養肉ハンバーグは、1200ドルでできるようになった。そしてクリーンミートは、コレステロール、飽和脂肪酸はなく、余分な脂肪もおさえられていた。「クリーンミートは、牛の肉よりも、本来の肉の味があった」と言われた。
まだ実用段階ではないが、培養肉を作っていた会社が、培養皮を作ることにも成功してきている。
フェイクミートのビヨンドミート、インポシブルミートも、急速に肉に近い植物起源の肉の生産がすすめられ、200兆円と言われる食肉産業に存在感を示してきている。ビヨンドミートは、中国にフェイクミートを作る工場の設立を2020年9月に発表した。また、緑豆から卵の卵黄を作る会社イートジャストも急速に発展している。
培養肉を作る明確な背景がある中で、クリーンミートは大きな展開をすることを予感させられた。
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