ジョン・ロックの「Of the Conduct of the Understanding」（１６９７年頃執筆）の訳である。文庫オリジナルではなく、１９９９年にお茶の水書房から出版された本の文庫化である。初めて読ませていただいた。
本書（文庫版）は約１７０頁の本文のほかに、約７５頁の訳注、約４２頁の訳者解説、約１３頁の訳者解説の注、約２頁の訳者あとがき、約５頁の文庫版訳者あとがき、約６頁の索引が付いている。活字の大きさを考慮すると、ロックの本文訳と、訳者の訳注等はだいたい同じぐらいの分量だろう。つまり、本書は、ロックの「知性の正しい導き方」の訳本のほかに、訳者による「ロック入門」または「ロック概論」または「ロックの「知性の正しい導き方」の正しい読み方」という本がくっついたような本である。
内容解説は省略する。ロックの本文訳を読まれることをお勧めする。
私的感想
●本書本文は、たいへんわかりやすい内容である。時代的制約（知識や学問を、安楽（裕福）で暇のあるある人たちだけの務めとする等）はあるが、現代に通じる発想、理念が、簡潔明瞭的確に著述されており、難しい語句、言い回しは少ない。訳文もたいへん読みやすい。高校生でも、大学生でも、本文を読んだだけで、十分理解できるように思う。
●詳細な訳注は労作であり、面白いところも多いが、訳者解説を読むと、ちょっとげっそりする。「・・・従来の多くの版は、ほとんど注をつけずに編集されてきたが、実はそのために、この作品は不十分な仕方でしか、理解されてこなかった」そうである。しかし、これだけの訳注を読まないと、十分な理解ができないような作品とは思えない。
●訳者解説は親切丁寧ではあるが、議論というよりは説教であり、まさに、「ロックの「知性の正しい導き方」の正しい読み方」を指導されているようで、あんまり楽しくない。
●訳者解説中のうちの、３０６頁から３１２頁の６頁の文献案内（ロックの読書案内、勉強の進め方）は、学生等を対象にしたもののようだが、一番目にはこれまたはこれまたはこれを読んで、二番目にはこういう関心がでてきたら、この本のこの辺をこういうふうに読み、別のこういう関心がでてきたら、この本のこれがよいから、古書店か図書館で探して読んで・・・と至れり尽くせり、上げ膳据え膳であるが、いくら何でも、世話の焼きすぎではないか。
私的結論
本文訳を繰り返し読むのが、「ロックの「知性の正しい導き方」の正しい読み方」と思う。
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