これまで臨床感染症業界の先達が積み上げてきた臨床知見を、著者のコトバで記述し直し、現在そして未来の医療提供者に伝達してくれる類い稀なる感染症治療テキスト~さながらソクラテスの言説を後世に伝えたプラトンの如く
「これだけ抗菌薬」という書名は、ある意味適切で、まさに感染症治療学に重点を置いたテキストである。
そのため、感染症診療の基本的な考え方(感染症診療のロジック)は著者のコトバでわかりやすく記載されているものの、感染症の「診断学」と「予防・感染対策」に関しては他書で学ばれた方がよろしいかと考える。
しかしながら、感染症治療に必要な、感染症検査や臨床微生物学の記載は秀逸であり、過去の感染症業界の偉人の遺産~特定の細菌集団の記憶術(LLMNS,PEK・・・)等業界人には馴染のあるものも多数記載されている。
文体は会話調で、類書では省略されている思考過程も意識して詳述されており、初学者がつまずかない配慮も行き届いている。
そして、大変重要な点であるが、同一内容・事柄が同一の表現・用語に統一されており、類書に見られる、バラバラで統一感の乏しいテキストと比較して、大変学習者に優しい記述となっている。
本書の内容のみで、日常頻繁にお目にかかる感染症症例のおよそ8割は対応可能であろう。
現場で活躍する多数の医療提供者が、本書を活用されることを期待する。
具体的な対象者と本書の使用法
・これから感染症を勉強する医師・看護師:本書を通読目指して頑張ってください
・ICT/ASTの薬剤師:本書の前半部分~第一章感染症診療のアプローチと第二章細菌のグルーピングを、繰り返し読み、内容を記憶されてから3章以降の感染症治療薬に進まれることをおすすめいたします。
・ICT/ASTの臨床検査技師:3章以降の感染症治療薬を中心に勉強されることをおすすめいたします。
そして、レビュワーが最も本書を推奨する対象者は、「感染症科以外の診療科の医師」です。感染症科の医師が、口うるさく様々なことを言う、その理由が見えてくるかと思います。さらに、本書を勉強しておけば、先手を打って感染症科医の「余計なお世話」を回避することにもつながるかもしれません。