まず映画を見てそれからこちらの原作を読みました。映画のラストがややわかりにくく、こちらの原作を読み終わってからさらに混乱。「映画の最後の意味を自分はちゃんとわかっていなかったのか」と自信がなくなりました。が、映画は原作から少し変えてあったんですね。あのひと捻りで事件の真相が別物になってきます。個人的には、原作のままの方がすっきりして説得力がありました。
恩田陸さん作品はよくオチがないと言われるのですが、これははっきりオチがあります。見事なミステリ仕立ての文芸作品になっていると思います。
”閉じられた雪の山荘”のように屋内の空間で、たたみかけるようなセリフの重なりによって舞台劇のように進む話です。
自殺してしまった天才肌の耽美派女流作家、重松時子。その担当編集者だった女性や弟子ともいえる物書きたち5人の女性は、時子の命日をはさんだ3日間に彼女を偲ぶ会を毎年開いています。
みんなが出版に関わる仕事につき、憧れたり、時子を超えられないと嫉妬したり、人生のほとんどを彼女のために費やしたりして、つまりは取り込まれ、振り回されたといえるでしょう。一生抜けないであろうその大きな影響、人生が変わってしまうほどの存在。特に実妹で出版プロダクション経営の静子は「才能が枯渇してきたみっともない時子が許せなくて、自分が彼女を追い詰めて殺した」と告白します。みんながそれぞれ心の内に隠し持っていたことが明らかになり、そこへ殺人を告発する花束が送られてきたりで、状況はだんだんと緊迫感を増していきます。
そんなピリピリした雰囲気の合間にはさまれるのがおいしそうな料理。この緩急の差によっていい意味で奇妙なバランスが保たれています。
恩田さんはおいしい料理とお酒に目がない方で、作品の中でも飲んで食べる話がよく出てきます。「象と耳鳴り」の中の「机上の論理」、「三月は深き紅の淵を」の中の1話目、そして「隅の風景」などの旅エッセイ。これらを読んでいるといつも自分もそこに参加させてもらって一緒に飲み食いしたいと思ってしまいます。
ここでも健啖家の女ばかり5人が盛大に食べて飲んでおしゃべりするシーンが壮観です。女性だったら「そうだ、女ばっかり集まったらまさにこんな感じだな」と共感するのではないでしょうか。
読んでいる間、今回も恩田陸ワールドに入り込んでしまいました。あとがきで大森寿美男氏が恩田さん作品を”恩田陸劇場”と呼び、「恩田さんの本を読み始めると、私はいつも日常の客電がすーっと落ちてゆく、あの感覚を味わうのである」と書いていらっしゃいますがとてもよくわかります。映画とともにお気に入りの作品になりました。
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木曜組曲 〈新装版〉 (徳間文庫) Kindle版
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耽美派小説の巨匠、重松時子が薬物死を遂げて四年。時子に縁の深い女たちが今年もうぐいす館に集まり、彼女を偲ぶ宴が催された。ライター絵里子、流行作家尚美、純文学作家つかさ、編集者えい子、出版プロダクション経営の静子。なごやかな会話は、謎のメッセージをきっかけに、告発と告白の嵐に飲み込まれてしまう。重松時子の死は、はたして自殺か、他殺か──? 傑作心理ミステリー。
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2019/2/8
- ファイルサイズ4.3 MB
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商品の説明
著者について
1964年生まれ、92年『六番目の小夜子』でデビュー。『ユージニア』で日本推理作家協会賞、『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、『中庭の出来事』で山本周五郎賞、『蜜蜂と遠雷』で直木賞、本屋大賞を受賞。他に『光の帝国』『消滅』など著書多数。
登録情報
- ASIN : B07NBGT45N
- 出版社 : 徳間書店 (2019/2/8)
- 発売日 : 2019/2/8
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 4.3 MB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 218ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 45,812位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1964(昭和39)年、宮城県生れ。早稲田大学卒。
1992(平成4)年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞を、2006年『ユージニア』で日本推理作家協会賞を、2007年『中庭の出来事』で山本周五郎賞をそれぞれ受賞した。
ホラー、SF、ミステリーなど、さまざまなタイプの小説で才能を発揮している。著書に、『三月は深き紅の淵を』『光の帝国 常野物語』『ネバーランド』『木曜組曲』『チョコレートコスモス』『きのうの世界』などがある。
カスタマーレビュー
星5つ中4つ
5つのうち4つ
616グローバルレーティング
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2025年1月6日に日本でレビュー済みAmazonで購入個人的に当たり外れが大きい恩田作品の中で、好きな部類。
頭の中でストーリーを映像化しやすく映画でも楽しめそうだと、各登場人物をどの俳優さんがいいか思い巡らせながら楽しく読ませていただきました。
既に映画化されていたのですね。。
絵里子が鈴木京香とは驚きですが、映画も観てみます。
- 2018年1月7日に日本でレビュー済みAmazonで購入恩田陸の長篇心理ミステリー。著者の「夜のピクニック」や「蜜蜂と遠雷」はもう一度読みたいと思える素敵な作品ですが、それらに比べるとワクワク感に欠けてしまうのが少し残念。
- 2016年10月3日に日本でレビュー済み久しぶりに恩田陸さんの小説を読みたくなり、未読だった本作を購入しました。
後半はずっと心臓がドキドキを通り越してバクバクしっぱなし(笑)
「なになに?結局どうなるの?」と興奮しながら読みました。
とても面白かったです。
女同士の心理戦は恐くもあり、迫力があってすごく見ごたえ(読みごたえ)があります。
- 2019年5月29日に日本でレビュー済みAmazonで購入作家同士の女子会だなと思ってた。一人の天才作家の死によって毎年集まる女子作家たちが、自殺か他殺かでもめるというよりは、楽しいおしゃべりという感じである。
- 2014年7月5日に日本でレビュー済み木曜日といえば、週の中頃で休日のようにがっつりと休めるわけではないけれど、
「あぁ、あと少しで休みだ」っていう、独特の安息とちょっとまだピリッとした緊張が残る曜日だと思うのです。
この小説はその木曜日の雰囲気にピッタリだと個人的には思います。
なじみの女たちが集まり、ワイワイ飲んでしゃべって楽しく安息の時間を過ごす…と思ったら、
数年前に起きた事件をもとに、探り合い、推理しあい、秘め事が明かされていく緊張感。
その探り合いがいったん終わり、さあ休もうか、となった途端にふと発見・判明する新たな謎…。
どの女性もひと癖あり、賢く、秘密を持っていて、伏線もしっかりあったので最後まで面白く読むことができました。
最後に判明した、数年前から彼女たちを縛り付けているある事件の真相が分かった時ぞくっときました。
女性たちの世間話はどれも面白く、ご飯の描写もおいしそうで、私もこの中に入りたいなぁと思いました。
- 2019年3月29日に日本でレビュー済みいかにも恩田陸らしい戯曲のような心理劇。まるで作者自身のような女性作家達を登場させ、語らせるのがとても興味深かった。これは男性作家では駄目なので、設定した時点でいくらかは自分を語るつもりがあったのだろうと推察される。誰か一人がモデルなわけではなく、言いたい事をいろんな人物に少しずつ語らせてるのではなかろうか。犯人捜しと言う穏やかではないシチュエーションなのに、食にこだわる図太さなども、女性特有か。
微妙な心理劇ながら、次々に新しい事実を提示するストーリーテリングも巧みで、飽きずに読み通すことが出来た。若干モヤモヤが残りスッキリとはしないが、これもある意味女性的である。
- 2014年9月4日に日本でレビュー済みAmazonで購入恩田陸らしいといえばらしいお話でしたし犯人探しのようでそうでないお話です。