政策評価制度は、PDCAサイクルの循環や国民への説明責任の達成といったその崇高な理念にもかかわらず、一方で「お手盛り」に過ぎず、他方で現場の職員にとっては無益なルーティン業務に過ぎないことはいままで批判されてきた。この本は、そのような現状を、合理的選択理論や官僚理論から導出される仮説および複数の経験的手法によるその実証、すなわち仮説演繹法によってより明確な分析を与え、その原因を究明するものである。その結論は説得的かつ、そこから導き出される今後への示唆は、ラディカルでありながら堅実かつ的確な分析に支えられているため、かなりの説得力を持つ。
この本の特徴は、その方法論の新奇性及び堅実性にある。すなわち、先行文献のレビューを踏まえて、これまでの研究には記述的研究が多く、実証研究が足りなかった等を指摘する。その結果として採用し実施されるのが、上記の仮説演繹法である。実証研究の方には私に特に知見がないため、その方法が本当に適正なものかどうかを判断できないが、少なくともそのように見える。
また、実証研究の手法についても、単一事例研究から始まるものの、それに加えて、アンケート調査の分析、インタビュー調査による分析を別途行っており、様々な形でデータを入手して実証を行っている。これによって、実証研究の部分はかなりの堅実性を得ているといってよいだろう。もちろん、筆者が明確に指摘するように、これらの研究でも検証できなった仮説や、あるいは実証研究としての限界は存在するが、それ以上の研究は更なるデータをはじめとした様々な資源が必要であり、ないものねだりになりかねない。むしろ、上記のような豊富な研究を踏まえつつも、そのような限界を明示していることは、この研究の信頼性を向上させる。
また、読んでいて、行政内部の事情に対する理解の深さに驚いたが、筆者自身が20年近く地方公共団体職員として経験を積んだ旨があとがきに記載されており、得心がいった。ただ、この本が素晴らしいのは、筆者が、その論証において、そのような経験に直接に依拠することは一切なかった、という点である。すなわち、筆者はあくまで、先行研究や公開されている情報、そして独自に取得したデータを基に議論を行っており、筆者の経験則に直接に依存した議論は存在しない。もちろん、そのような経験則は、筆者によるデータの取得・分析に役立っている(そのため非常に的確な分析になっている)と推測されるが、そのような背景的役割を果たすに留まる。経験則自体は何の学術的根拠でもないため、学問的に、非常に真っ当かつ真摯な姿勢であるといえよう。
このように、この本は、非常に高い方法論的意識に支えられて、適切な方法の選択の下に遂行された非常に堅実な研究として評価できる。その内容が優れているのも、このような研究の在り方の当然の帰結といえる。
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政策はなぜ検証できないのか: 政策評価制度の研究 単行本 – 2020/6/12
西出 順郎
(著)
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なぜ「お手盛り」の評価が生まれるのか? 評価結果はいかに歪められるのか? 制度的要因を探索しつつ、因果メカニズムを実証する。
なぜ政策評価制度は機能しないのか。これまで、政策評価は身内による「お手盛り」と批判されつつも、その因果メカニズムは明らかにされてこなかった。本書では、評価に従事する行政職員の意図から実際の評価結果に至るまでの制度運用を解明し、このような運用がなされる要因を明らかにして、評価が歪んでいく構造を実証する。
なぜ政策評価制度は機能しないのか。これまで、政策評価は身内による「お手盛り」と批判されつつも、その因果メカニズムは明らかにされてこなかった。本書では、評価に従事する行政職員の意図から実際の評価結果に至るまでの制度運用を解明し、このような運用がなされる要因を明らかにして、評価が歪んでいく構造を実証する。
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社勁草書房
- 発売日2020/6/12
- 寸法15.7 x 2 x 21.8 cm
- ISBN-104326302917
- ISBN-13978-4326302918
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商品の説明
著者について
西出 順郎(にしで じゅんろう)
福井県庁に入庁後、シラキュース大学マクスウェル行政大学院行政学修士課程(M.P.A.)・経済学修士課程(M.A.-Econ)をともに修了。福井県庁退職の後、琉球大学助教授、岩手県立大学教授などを務める。2018年より明治大学公共政策大学院教授。この間、早稲田大学大学院公共経営研究科博士後期課程を修了、博士(公共経営)を取得。専門は行政学、政策評価。著書に『震災後の自治体ガバナンス』(東洋経済新報社、2015、共著)、『公共部門の評価と管理』(晃洋書房、2010、共著)など。
福井県庁に入庁後、シラキュース大学マクスウェル行政大学院行政学修士課程(M.P.A.)・経済学修士課程(M.A.-Econ)をともに修了。福井県庁退職の後、琉球大学助教授、岩手県立大学教授などを務める。2018年より明治大学公共政策大学院教授。この間、早稲田大学大学院公共経営研究科博士後期課程を修了、博士(公共経営)を取得。専門は行政学、政策評価。著書に『震災後の自治体ガバナンス』(東洋経済新報社、2015、共著)、『公共部門の評価と管理』(晃洋書房、2010、共著)など。
登録情報
- 出版社 : 勁草書房 (2020/6/12)
- 発売日 : 2020/6/12
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 224ページ
- ISBN-10 : 4326302917
- ISBN-13 : 978-4326302918
- 寸法 : 15.7 x 2 x 21.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 415,159位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2020年6月26日に日本でレビュー済み
2022年8月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「政策はなぜ検証できないのか」って、そりゃお手盛りだからでしょうよ、という当たり前の話を丁寧に裏付けた論文。根拠も怪しい奇矯な説を派手にぶちあげるんじゃなくて、こういう地道な調査こそが社会科学の本来の姿かもしれない。
「政策に実効性があったかどうか」は「政策の計画が適切であった」と「計画通りに実行した」が共にYESなら、自動的にYESなので評価する必要なし、なんていう馬鹿馬鹿しいリクツがまかり通るのが「政策評価学」の実態らしい。そんなもの、ほっといていいのかい、という問題意識から見れば重要な本だ。ただし、面白いかといえば、いや全然。
「政策に実効性があったかどうか」は「政策の計画が適切であった」と「計画通りに実行した」が共にYESなら、自動的にYESなので評価する必要なし、なんていう馬鹿馬鹿しいリクツがまかり通るのが「政策評価学」の実態らしい。そんなもの、ほっといていいのかい、という問題意識から見れば重要な本だ。ただし、面白いかといえば、いや全然。
2020年12月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「goto トラベル」や「アベノマスク」の政策評価は「良い」評価になるはず。それをここまで理論付けできるのはすごいと思う。しかし、逆にここまで理論付しても政策評価を発展的にしか解消できないとすることに、限界を感じる。
地方公共団体では、法務と福祉施策を無理やり評価している場合もある。次は、評価の対象を絞る基準のようなものを提示していただきたい。
地方公共団体では、法務と福祉施策を無理やり評価している場合もある。次は、評価の対象を絞る基準のようなものを提示していただきたい。