本書の特徴は、14pの「人工的視点から」で書かれているように、小林一三が「大阪の人口過密状態を出産率と死亡率の比率で表現するという人口学的な発想(19p)」を得たことで分譲地開発を思い立ち、箕面有馬電気軌道鉄道の魅力に気付いたという視点が珍しいと思いました。
名経営者の誉れの高い小林一三の人間臭い一面にも触れられている実に興味深い記述が続く伝記でした。箕面有馬電気軌道鉄道の経営から阪急電鉄の礎を作り、宝塚歌劇団を生み出し、日本で最初のターミナルデパートとして成功した阪急百貨店という魅力的な商業施設を作り、東宝や阪急ブレーブスといったショービジネスでの世界でも名を挙げた稀代の名経営者です。
阪急の礎を確立した実業家の小林一三(1873-1957)について書かれた書籍は多い訳ですが、あまりにも多くの業績がある逸翁ですので、どちらかというと神格化された本が多い中、逸翁の若き日の破天荒ぶりなども伝えるなど、読者を意識した素敵なエピソードが満載されています。女性問題も現代の感覚ではありえません。明治の経営者だから許されてきたのでしょうが。
箕面動物園の失敗や宝塚新温泉の室内プールの見込み違いなど、失敗もあるわけです。それにもめげず、起死回生のプランとして宝塚歌劇を作り出したのは、逸翁の強みであるアイデアマンの試行錯誤の例として理解してきました。
東洋一の温泉や、宝塚パラダイスでの最初の少女歌劇「ドンブラコ(112p)」へとつながります。宝塚歌劇団の草創期の歴史を知るのと同時に、箕面有馬電気軌道鉄道の開発の歩みも知ることが出来る好著だと思いました。
なお、小林一三と生涯の交友を果たす松永安左エ門「耳庵」が監獄に送られた話も興味深いものがありました(92p)。2人とも慶應義塾出身という共通点もあり、先輩と後輩の関係ですので、後に財界人という立場だけでなく、茶人仲間としての親交も深まったと思われます。
『逸翁自叙伝』を基に、本文を引用しながら分かりやすく書かれてあり、他の著者の『小林一三伝』も披露しながら、肉付けをしていく手法は書き手の力を感じさせるものがありました。
『中央公論』2015年10月号から2018年12月号まで「宝塚をつくった男・小林一三 人口学的発想の経営」の連載を1冊にまとめた本です。分かりやすい書きぶりが、無味乾燥な評伝とは一線を画しています。
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小林一三 - 日本が生んだ偉大なる経営イノベーター (単行本) 単行本 – 2018/12/19
鹿島 茂
(著)
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阪急、東宝、宝塚……。近代日本における商売の礎を作った男。哲学と業績のすべて。博覧強記の著者による、圧巻の評伝。
- 本の長さ512ページ
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2018/12/19
- 寸法13.2 x 3 x 19.1 cm
- ISBN-10412005151X
- ISBN-13978-4120051517
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商品の説明
著者について
鹿島茂
一九四九(昭和二十四)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。現在、共立女子大学文芸学部教授。専門は、一九世紀のフランスの社会生活と文学。九一年『馬車が買いたい! 』でサントリー学芸賞、九六年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、九九年『愛書狂』でゲスナー賞、また二〇〇〇年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、〇四年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞した。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。
一九四九(昭和二十四)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。現在、共立女子大学文芸学部教授。専門は、一九世紀のフランスの社会生活と文学。九一年『馬車が買いたい! 』でサントリー学芸賞、九六年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、九九年『愛書狂』でゲスナー賞、また二〇〇〇年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、〇四年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞した。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。
登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2018/12/19)
- 発売日 : 2018/12/19
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 512ページ
- ISBN-10 : 412005151X
- ISBN-13 : 978-4120051517
- 寸法 : 13.2 x 3 x 19.1 cm
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上位レビュー、対象国: 日本
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- 2019年1月28日に日本でレビュー済みAmazonで購入著者が小林一三についてとことん調べ上げたことが実によく分かる内容であった。また、小林以外の人物にも目を向けた上で、いかに小林のプロデュース力が長けていたかがよく理解できる。政治家としての小林が語られることは少なかったが、自由主義者の視点から戦時下の統制経済に果敢に抵抗したことが書かれている。これは、改めて起業家の面以外で小林の評価すべき点である。ただ、最後は東宝の話ばかりだったのが少し物足りなかった。しかし、全体として満足できるものであった。日本にここまで多くの事業を成功させてきた人物は小林しかいないだろう。21世紀を担う若者に是非とも読んでもらいたい。
- 2019年4月24日に日本でレビュー済み伝記が好きな子は今も多いが、子供のころあまりよく読んだ記憶がない。長じて福沢諭吉の「福翁自伝」を読んで伝記の面白さに気が付いた。
伝記には最後まで読み通せる伝記と読んで1ページで読むのをやめる伝記と極端に二つに分かれる。安倍能成が書いた「岩波茂雄伝」は本人にほれ込んだ著者の気持ちが伝わってくるが中立的ないい伝記だ。つまり伝記の主によいしょがあるとその本を読む気は失せるのだ。
今回500ページを超える小林一三の伝記を読む気になったのは、一には著者が「鹿島茂」であることだ。彼がかってある雑誌に連載したパリ日本館の館長「薩摩治郎八」の伝記は細部にまで調査が行き届き、それをもとに良く書き込み、こんな日本人が当時生きていたことを眼前に彷彿とさせる素晴らしい読み物だった。
次いで伝記の主が小林一三であることが読もうとした当然の理由だ。自分のルーツの地信州長野県の隣県である甲州山梨県出でありながら関西に宝塚歌劇や電鉄を含む阪急王国を創設した男として昔から関心を持ってきた人だ。なぜ関西弁を喋れない彼が京阪神に阪急王国を築けたのか?そもそもはそういう単純な理由で興味を持ったのだが、「鹿島茂」は彼の持つ地道な調査力をベースにこれまで多数出ている「小林一三伝」をはるかに超える書物を書き上げた。
その一つに小島直記というある時期に筆名をあげていた経済小説家の書いた伝記の、憶測と孫引きによる書を、事実を持って一つ一つその誤りを正している国政篇の個所は胸のすくような思いがした。やはり忖度より事実だ(笑)。この後半の部分は小林一三という人のこれまで一部にあった評価をも変えうる内容を持っている。
余談だがサントリー一族のゴッドマザーだった人が小林一三の次女であることをこの本で初めて知った。
また通算36年ほど阪急沿線で暮らした自分には阪急が阪急になる過程をつぶさに描き切っているこの書は、
まことにもって貴重な阪神間と阪急文化のバイブルでもあると思った。
小林一三! 本当の意味で日本に民主主義・自由主義をおいもとめ、実現を目指した稀有な愛国者。この本を措いたときそう思った。
ちなみに映画の東宝が阪急グループなのは知っていたが、このところよく行くようになった錦糸町の江東楽天地が元は小林一三の肝いりで作られたのは初めて知った。
510ページにわたり日本の明治大正昭和に生きた一人の実業家を描き切ったこの伝記は、ある意味「日本の生きた近現代史」である。
- 2020年5月11日に日本でレビュー済みAmazonで購入以前、NHKでドラマ化して放映したのを見て、もっと小林一三を知りたかったので購入。
- 2019年4月22日に日本でレビュー済み小林一三のことをここまで多角的な視点から描き出せるのは、鹿島茂さんしか居ないのでは?
阪急文化を語る章では、谷崎潤一郎のみならず村上春樹にまで(ちらりと)言及。
経営のみならず、文化、政治、歴史と、縦横無尽に小林一三の足跡を辿ってゆく。
これまでに書かれた評伝に見られる欠点を、驚嘆すべき資料の読み込みで暴き出す筆力。
(私には本書を批判的に読めるだけの知識はないのだが)フツーの読者を飽きずに並走させる、読書の醍醐味も味わえる。
白眉は、岸信介ら政治家との軋轢のなかで、一三がどう時代を見透していたかをあぶり出している点。
現代のわれわれがどう生きていけばいいのか、そこまでの長いリーチを備える懐の深さが、本書にはある。
小林一三を英雄視する必要はないけど(私にとっては郷里の星)、きちんと、必死に、仕事をするという、背中を見せてもらった気分。読んで良かった。
- 2020年8月15日に日本でレビュー済み小林一三の携わった鉄道、演劇、百貨店、電気の4つの事業と、政治家としての活動が時系列順に記載されています。
510ページとかなりの分量がありますが、事実と登場人物(小林一三と周囲の人)の意図、作者の意見が明確に切り分けられており、読みやすいです。
小林一三の大衆への健全な娯楽の提供、資本主義に対する思想などが書かれており、事業や経済への捉え方を見直すことができます。
- 2024年3月18日に日本でレビュー済み明治大学の名誉教授にまでなった方が、この程度のものしか書けないのなら、何か、悲しい。