この手の問題集は結局のところ過去問を並べて解説を付けるだけなので、すべて普通と言えば普通である。
しかしその中で本書は異彩を放っているように見える。その理由を以下に述べる：
１．問題は少なめ
入試における文法問題は減少する方向にあり、文法学習の目的は「言語の土台としての文法」の習得へと変わりつつある。
土台なのだから、数をこなして暗記することにさほど意味があるわけではない。
本書は独特の体系性で貫かれており、その観点から必要な問題が厳選されている。
２．高密度で充実した解説
解説は本書のキモである。問題ごとの解説に加え、章末の Advice や Topic でも改めて知識の体系付けが図られる。
きょうじ節ともいえる独特の舌足らずな文体で、わかり切ったことは端折った上で情報を詰め込んでいる。
著者の日本語は下手とは言わないが、それこそ「普通」レベルである。読者の立場に立って「練る」作業が不十分で、ところどころわかりづらい。
それを差し引いても、例文も多く読むに値する解説になっている。
３．入試英文法問題への配慮
本書のメインターゲットは受験生なので、英語の土台としての文法に軸足を置きつつ入試英文法問題対策にも十分な字数を割いている。
（そもそも収録されている問題は入試問題である。）
結果として、「自然な文だが入試では出題されない」「口語としてはかなり堅苦しい文体」「現代英語では...も多いのだが入試ではこう答える」など、ニュアンスに踏み込んだ解説スタイルとなっている。
丸暗記派には複雑なわかりにくい解説と映りかねないが、むしろ著者の良心の表れというべきだろう。
気になった点だが、P24の「注意すべき動詞の活用」に発音表記がないのは残念。
紛らわしい動詞を集めた表だが、saw とか sew とか sow とか読み方も紛らわしいものが多く、まとめて整理したいところ。
本書は、受験生にも社会人にも有益であるのみならず、文法マニアが読んでも楽しめる深さがある。
解きっぱなしでない、丸暗記ではない、体系性がウリの問題集であり、努力を無駄にしたくない人に薦めたい。
ただ、独特のきょうじ節を理解するには著者の日本語に慣れておく必要があり、やはり本編を先に読んでおくことが望ましい。
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