本の帯には、「施設の不安を吹き飛ばす!」と力強く拳を突き上げる様子が描かれているのですが、本書を読み終えた私は不安だらけになってしまいました。
筆者の一人小島美里さんは、「『良い施設』なんてこの世にない!」とキッパリ(109頁)。その理由について、介護保険制度がグチャグチャになってきており(272頁)、人手不足が深刻で(176頁)、「いい施設、合った施設に入れるというのは、よくよく探さなければできないという状況」(46頁)になっていると指摘されました。
施設介護に期待できないのなら在宅での介護ということになりますが、その在宅介護に関しては、ひとり暮らしで認知症となり要介護3であった場合の介護費用は月間約30万円も掛かるという試算を紹介されます(174頁)。家賃や生活費を除いて30万円も掛かるのです。在宅介護で逝けるのは富裕層だけ!(162頁)という現実が突きつけられます。
在宅も施設も期待できないとなると、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を検討しようと考える方もおられるかも知れませんね。しかし、サ高住は天井知らずの出費になりがちで(61頁)、しかもサ高住で受けられるサービスとは介護ではなく安否確認と相談であり、業界では「サービスなし高齢者住宅」と呼ばれている(80頁)ことも紹介されます。
小島美里さんは、利用者負担割合と補足給付の見直しによって(171頁)、介護サービスが使えない人が増加していることに警鐘を鳴らしています(158頁)。そして、老後への不安を解消するためには「皆さんもどうか声を上げて!」(279頁)と啓発しています。
本書では、介護保険制度に対する提言だけではなく、佐藤眞一先生による心理学的な側面からの認知症の解説もされております。施設入所して無気力になって寝てばかりという方の場合には、「学習性無力感」の可能性も考えなければならないと指摘し、具体例として「サーカスの象」の話を紹介されました(146~149頁)。また番外編では、レビー小体病の当事者である樋口直美さんがマンガという手法を用いることによって、ご自身が見ている幻視の様子などを分かりやすく伝えてくれるとともに、高齢者では発症していなくても三人に一人はレビー小体が認められる(221頁)という衝撃の最新情報もご紹介されました。
介護、医療の両面から分かりやすく認知症について学べることができとても有益な一冊だと思いました。